Sigrid Volders
Playful Colors and Imperfect Form
アントワープ郊外、ひときわ時間がゆっくり流れるような緑豊かな地域にある季節の草花の生える庭に囲まれたアトリエで、シグリッド・ヴォルダーズのセラミック作品は作られます。”自然”が最も大きなインスピレーションの源と語る彼女の作品は、全く同じものはふたつとないユニークで有機的なフォルムをかたどり、淡く柔らなカラーパレットで溢れています。
Bio
シグリッド・ヴォルダーズが陶芸を始めたのは2013年。それまで、メークアップアーティストとして10年以上にわたり目まぐるしいスピードで変化し続けるファッション業界に身を置いていたシグリッドですが、もともとアートやクラフト、ものづくりが好きだったこともあり、”Atelier Solarshop”(デザイナーのJan-Jan Van EsscheとPiëtroCelestinaによってキュレーションされたショップスペース)とコラボレーションするようになります。そこから繋がったテキスタイルアーティストとのコラボレーションによるアートプロジェクト”Earth Rope Pot Plant”で、ギャラリーやセレクトショップのウィンドウを飾るインスタレーションに使う美しい陶器の器を探しているうちに、自分でも作ってみたいという気持ちが彼女の中にふつふつと湧き上がります。その後、アントワープのアートアカデミーで教育を受け、現在ではセラミックアーティストとしての活動に専念するほか、地元のセラミックスタジオで週に2回講師もしています。
Colors and Shapes
かつてはメークアップアーティストとしてモデルの顔の上にさまざまな色を纏わせ、そして現在は、セラミックアーティストとして釉薬の調合法を研究しながら、常に色・釉調の表現を探る、そんなシグリッドは自分のことを”色”に魅了されているのだと言います。
彼女の制作のプロセスはとても直感的で、例えば石膏型を使ったり、デザインスケッチから始めたりすることはありません。機械で作ったようなものを作ったって彼女にとってはなんの意味もないのです。
まるで色やかたちと戯れるかのように作り出される彼女の作品たち。作った時の喜びが、実際に使ってみてわかると言われるのが、彼女にとって何よりの褒め言葉なのです。
Nature
アントワープ郊外の自然豊かな地域に位置する自宅件アトリエは、季節の草花に囲まれています。
各地を飛び回って、毎日違う人と顔を合わせ、ある種狂ったような時間を過ごしたメークアップアーティストとのときとは異なり、自宅のアトリエで作業できる今がすごく心地いいのだと彼女は言います。
「陶器をつくるペースは、ファッション業界に比べるとずっとずっとゆっくりで、それがすごく気に入っているの。」
「子どもの絵や静物画、繊細な絵画も大好きだけど、最もインスピレーションを与えてくれるのは自然。」
季節の移ろいを感じながら自然の中を長い時間かけて散歩する、友人と庭を訪ねる、始めたばかりの庭いじりを楽しむ、そんなことが彼女の創造の源となっています。
Tea Scenery
「毎回、どんな作品がそのギャラリーに合うかミックスアンドマッチさせるのが楽しい。」現在ヨーロッパ数カ国そして日本のギャラリーでも取り扱われるシグリッドの作品。基本的には毎回、彼女の側からそれぞれのギャラリーに向けて提案し、作品が作られます。
"Tea Scenery"がモチーフになっているという、 Objet d' art に向けて今回制作してくれた作品は、たくさんのカップやプレート、それから、プレイフルなジャグにフラワーボウル、タイルのアートワーク"Colour and Form"とバラエティに富み、土選びから釉薬の調合、彼女の手が紡ぎ出すかたち、そしてそれらの組み合わせは見れば見るほどに興味深く、またそのどれからも彼女の人柄と創作意欲が伝わるラインナップです。
彼女と実際に会ったことがなくとも、手にすればきっと、彼女がどんな顔でいかに楽しみながらその作品を作ったのかが思い浮かび、自然と穏やかでやさしい気持ちになる、そんな作品で溢れています。