Objet d' art

FOCUS

Antiques – the beauty of Anonymous Design –

無意識の美と現代の役割

アノニマスとは「作者不明の」「匿名の」という意味合いです。インダストリアル・デザイナーの柳宗理が紹介したことにより広まりました。「純粋に用途のみを考慮した製品、即ち無名のデザインは非常に健康的」だと発言。さらに日本の伝統的クラフト製品にも特筆すべきデザインが多いと述べ、民藝運動の先駆者である柳宗理の父、柳宗悦が「無銘の物品」に美を見出した精神、いわゆる「用の美」を継承するモダンデザインを提唱しました。Objet d’ artでは、デザイナーが特定できない、あるいは無名ながらも優れた”ヴィンテージ”の作品もこちらにカテゴライズしておりますが、本項では、1800年代~1900年代初頭に作られたアンティークと、それらを用いた空間作りに関してご紹介させていただきます。

Spanish Antique
Primitive Three-Leg Stand

19世紀にスペインで作られたチョッピング・ブロック。元々は食材を切ったり刻んだり、木を割るために作り出された生活の道具です。作家性の無い、まさしく純粋に用途のみを必要とされ生み出された形状が、使い込まれた表情と相まって、まるで一種の彫刻のような佇まいです。エンドテーブルやサイドテーブル、オブジェとして、空間に動きを出すことのできるアイテムです。

Spanish Antique Desk
with Designers Vintage

プリミティブな造形が目を引く、スペインからのアンティークデスク。何らかの作業台として使われてきたもので、当時、使用者が自ら拵えたものかもしれません。このような「無名」の作者のデスクと、ピエール・ジャンヌレの椅子や、インゴ・マウラーの照明といった、モダンデザインを代表するようなデザイナーの作品を組み合わせることによって、より選択肢のある空間を演出することができます。

Belgium Antique Round Slate Table
with Modern & Contemporary

ベルギーからアンティークのスレートのガーデンテーブル。無骨でありながらミニマルな作品。かつてベルギーから北フランスにかけて、長く愛されてきた伝統的なデザインのテーブルで、中には、中間世紀ごろに作られた個体も存在します。組み立て式の合理的な構造です。ブルータルな佇まいは、コンテンポラリーの作家ものからヴィンテージのマスターピースまで、あらゆる作品との相性が良く、無機質な中に、素材が持つ表情が光ります。

Tuareg Big Wooden Plate

アンティークは様々な使い手によって大切に引き継がれ、現代に繋がってきているものです。長い年月の中で綻びが出ることはもちろんございますが、様々な直し手による「痕跡」が、より味わい深いを生み出します。プレート本来の役割だけでなく、オブジェとしても成立する、佇まいです。直し手は意図していない、独創性のある修復跡が、用の美を伝えてくれると同時に、空間に抜け感をもたらします。

18th Century Swedish Huge Cabinet
with Modern & Contemporary

クラシカルな空間にモダンの作品が良く合うように、モダンな空間にもアンティークはとても良く映えます。長い時間を経たからこその佇まいは、価値観を更新し続け、役割を変えながら次の世代へと引き継がれていきます。